この本は、公共経営を学ぼうとする皆さんとともに、これからの公共の在り方と自らの役割を考えることを目的としたものです。市民と公共との関係は、市民が公共サービスを受ける側だけではなく、公共の担い手となることだと本書では主張しています。市民が「主体」となって多様な人々や組織と協働するカタチ、そして社会問題を解決するビジネスがその成果を広く社会に還元するカタチを「新しい」公共経営だと考えました。「序章」より
目次 序 章 新しい公共経営論(樽見弘紀/服部篤子)
第Ⅰ部 新しい公共経営を学ぶ
第1章 市場の失敗,政府の失敗,NPOの失敗(石田 祐)
1 経済社会で活動するプレイヤーが公共経営において果たす役割
2 市場の機能と限界
3 政府の役割と問題
4 新しいプレイヤーの登場:NPO
5 これからの公共経営におけるプレイヤーの可能性
第2章 社会起業家とソーシャル・イノベーション(服部篤子)
1 社会課題とソーシャル・イノベーション
2 社会起業家の役割
3 ソーシャル・イノベーションへのアプローチ
4 ソーシャル・イノベーションの実践――銀座ミツバチプロジェクト
5 持続可能な社会に向けたプロセス
第3章 社会課題の解決を促す資金の流れ(前田裕之)
1 事業収益を増やすNPO法人
2 存在感が大きい補助金・助成金
3 世界で注目集めるインパクト投資
4 期待が大きいSIB事業
第4章 企業が解決する社会課題とマネジメント(島岡未来子)
1 企業による社会的課題の解決への国際的な期待
2 企業と社会の関係変化
3 社会課題の解決方法
4 企業内における社会的課題解決に向けた活動の意思決定
5 社会的課題解決に向けてこれからの企業に求められること
第5章 不確実性と公的・非営利組織のマネジメント(ジェームズ・M・マンディバーグ/ソンミ・キム/服部 崇)
1 組織の捉え方はどのように変わってきたか
2 どのような組織がどのようなサービスを提供しているか
3 安定性に関する仮定が組織思考にどのように影響したか
4 不確実性と意思決定
5 不確実性を受け入れる:組織の意思決定および計画への非線形アプローチ
6 不確実性と予測不能性を受け入れるツールと方法
7 線形アプローチを改善しようとする新しい管理ツール
8 まとめ
第6章 学生のソーシャル・ベンチャー(岡本仁宏)
1 何をしたいのか:その1 参入型と創発型
2 何をしたいのか:その2「社会的」企業と普通の企業,非営利目的と営利目的
3 リスク,そして学生の起業について
4 あるソーシャル・ベンチャー:Nさんの例
5 最後のメール
第Ⅱ部 公共経営と市民社会・NPOの四半世紀
第7章 変わりゆく行政(内藤達也)
1 自治体経営の背景
2 これからの自治体経営
第8章 アートプロジェクトと地域経済(小田切康彦)
1 地域再生とアートプロジェクト
2 海の復権と瀬戸内国際芸術祭
3 なぜ瀬戸内国際芸術祭は生まれたのか
4 瀬戸内国際芸術祭は何をもたらしたのか
5 瀬戸内国際芸術祭が示唆するもの
第9章 市民の資金をつなぐNPOバンク(河西邦人)
1 NPOバンクが生まれた背景
2 北海道NPOバンクの事例
3 NPOバンクを取り巻く環境の変化とNPOバンクの経営戦略
第10章 ソーシャルメディアと市民放送局(北郷裕美)
1 ソーシャルメディアとは何か
2 ソーシャルメディアの歴史と種類
3 パブリックアクセス
4 市民ジャーナリズム
5 非営利組織のメディア戦略
6 ソーシャルメディアとしての市民放送局
7 事例FM わぃわぃの決断
8 伝送路とメディアの多様性
第11章 あらためて考えるNPO中間支援と市民社会(今田克司)
1 NPO萌芽期と中間支援への注目
2 時代の変遷
3 NPOの危機意識
4 これからの中間支援に求められる機能
あとがき(樽見弘紀/服部篤子)
索 引